知って得するフィルムの世界

身近にあるのに意外と知らない、フィルムのあんなこと・こんなこと。
覗いてみたら、ちょっとだけ世界が変わって見えるかもしれません!

連載4

『 知って得する豆知識 静電気について 前編 』

フィルムの加工や印刷を巡るトラブル、その原因は"静電気"かも知れません。
今回はそんな静電気の正体に迫ってみましょう。

静電気とは何か?

私たちの周囲にある物体は普通、電気的にはプラスでもマイナスでもない中性の状態にあります。これは、物質を構成する原子において、プラスの電荷を持つ原子核と、そのまわりをまわるマイナスの電荷を持つ電子のバランスがとれているからです。
ところが、何らかの理由で原子から電子の一部が引き離されたり、逆に余分な電子が原子にくっついたりすると、その物質はプラスまたはマイナスの性質を現わします。
物質がこのように、プラスかマイナスの電気的性質を示すようになることを「帯電」と呼び、物質に帯電した電気を「静電気」と呼びます。これに対し、電流のような移動する電気を動電気といいます。
物質には、金属のように電気を伝えやすい「導体」と、木材やゴム、プラスチックのように伝えにくい「絶縁体」があります。絶縁体のほうがいったん帯電すると電気は逃げにくく、静電気がたまりやすいといえます。

静電気が起きる仕組みとは?

静電気物質を帯電させ、静電気を発生させる方法としては、摩擦が最も身近でポピュラーです。しかし、物質によっては、摩擦ではなく接触するだけで帯電する場合があります。その他、圧力や熱によっても帯電することが知られています。
一方、電気を通しやすい導体においては、静電気はたまりにくいものの、外部からプラスまたはマイナスの電荷を近づけると(接触はしない)、その表面に逆の電荷が引き起こされます。これを「静電誘導」といい、物質の一部に静電気がたまった状態といえます。冬、車のドアなどを触ったときのショックも、帯電した人体の指先が金属(導体)に近づき、静電誘導で発生したプラス・マイナス逆の電荷との間で瞬間的に高圧の放電が起こるせいです。ドアなどを触れる前に地面や建物の壁などに触れて、体に帯電した静電気を逃がしてやると、こうした放電は起こりません。

静電気の応用技術

最初の応用例は、工場の排煙の集塵装置でした。煙突の中に針金を入れ、マイナスの直流高電圧をかけると、煙突との間でコロナ放電が起こり、排煙中の微粒子がマイナスに帯電して、アースされた煙突本体(電気的にはプラスの陽極)に引き寄せられます。家庭用のイオン空気清浄器も、基本的には同じような仕組みです。
現在ではこのほか、ムラのない塗装が簡単にできる静電塗装、カーペットなどに使われるパイル地を高速・大量に製造する静電植毛、そしてコピー機の基本原理である静電複写、またレーザープリンターも静電気力を応用しています。
このように、私たちの身のまわりで静電気はごく普通に起こっていろいろなトラブルの原因になる一方、その現象を上手にコントロールすることで大きなメリットも得ているのです。

参考文献:堤井信力著『静電気のABC』(講談社ブルーバックス)

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