知って得するフィルムの世界
身近にあるのに意外と知らない、フィルムのあんなこと・こんなこと。
覗いてみたら、ちょっとだけ世界が変わって見えるかもしれません!
『知って得する豆知識 静電気とフィルム 後編』
フィルムの加工や印刷を巡るトラブル、その原因は"静電気"かも知れません。様々な用途で利用されているプラスチックフィルムですが、静電気の影響を受けやすく、意外なトラブルの原因になっている可能性があります。そんなとき役に立つ、帯電防止フィルムについてご紹介します。
どこにでもある"静電気"トラブル
一般に電気を通しにくい性質をもった物質(絶縁体)は静電気を蓄積しやすく、絶縁体のひとつでもあるプラスチックフィルムも、その使用や加工の過程では様々な形で静電気の影響を受けます。
例えば、プラスチックフィルムをキャリア材として用い、電子部品などを自動搬送する際、重送を起こしてロスが多いケース。薄いフィルムの抜き加工品を製品に装着する際、指などに付着してハンドリングミスが発生しやすいケース。また、ロットによってインキののりが悪く、印刷ムラができるケース。これらは、静電気が原因になっている可能性が十分考えられます。
帯電防止フィルムで全面的・長期的な対策
静電気のトラブルの対策として、イオン発生装置や除電ブラシを取り付け、静電気を除去する方法があります。こうした外部的な対処法はコストも比較的安くできますが、十分に静電気を除去できないことがありますし、効果自体、局所的で短時間しか持続しません。また、除去後の工程で再度帯電することも考えられます。
これに対して、フィルム自体に帯電防止加工を施す方法なら、フィルムの全面にわたって効果がありますし、効果の持続も長期間にわたります。
扱うフィルムが極めて薄い場合などには、イオン発生器や除電ブラシといった外部的な対応より、フィルム自体を帯電防止加工にしたほうが有効性は高いといえるでしょう。
帯電防止フィルムの種類
帯電防止フィルムは大きく2つのタイプが主流となっています。
塗剤に界面活性剤を用いるタイプは、フィルム表面に空気中の水分が吸着し、その水分(導電性)を通してフィルムの静電気を逃がすものです。
もうひとつの導電性樹脂タイプは、樹脂中の分子イオン移動によって静電気を防止します。
静電気の防止効果はいずれもほぼ同等ですが、耐熱性、耐湿性、耐摩耗性などの特性は異なります。
その他、導電性樹脂をフィルム自体に混合したタイプもありますが、フィルム表面で十分な性能を発揮できないので効果は落ちます。基本的には表面処理による帯電防止フィルムがお勧めです。いずれにしても、それぞれの特徴を生かし、フィルムの用途や加工環境によって、使い分けることが重要といえます。
帯電防止フィルムの特性比較
品種 | Bタイプ | Eタイプ | Fタイプ |
---|---|---|---|
塗剤タイプ | 界面活性剤 | 界面活性剤 | 導電性樹脂 |
表面抵抗値(Ω/O) | 108~10 | 108~10 | 108~10 |
経時変化 | ○ | ○ | ○ |
密着性・貼付前(Ω/O)・剥離後 | 109~13 | 109~13 | 109~9 |
吸灰性 | ○ | ○ | ○ |
耐熱性 | ◎ | ○ | ◎ |
耐湿性 | △ | ○ | ◎ |
耐摩耗性 | ○ | ○ | △ |
静摩擦係数 | 0.14~0.17 | 0.15~0.18 | 0.15~0.22 |
動摩擦係数 | 0.24~0.33 | 0.08~0.14 | 0.36~0.68 |
※上記特性値は保証値ではありません